Blog
ブログ
2025.12.05
住まいづくりコラム
土地選びで迷子にならない!優先順位の考え方
家づくりにおいて、土地探しは最初の大きな関門です。立地・広さ・価格・日当たりなど、求める条件は多々ありますが、すべてを満たす土地はほとんど存在しません。条件が曖昧なままだと良い土地を見逃すか、決断できずにチャンスを逃してしまうことにも――。
そこで必要なのが”優先順位を明確にする”という考え方。土地条件の整理方法、優先順位の決め方、福井での土地探しにおける地域性を踏まえた判断基準を知ることで、迷子にならない効率的な土地選びができるはずです。
なぜ土地探しに優先順位が必要なのか
土地探しを始めると、多くの方が「すべての条件を満たす完璧な土地があるはず」と考えがちです。しかし現実には、価格・立地・広さ・日当たりなどの条件をすべて満たす理想の土地は、ほとんど存在しません。
関連記事:必見、土地探しのポイント!
そこで重要になるのが、複数の条件の中から何を重視するかという「優先順位」の考え方です。限られた予算の中で価格と立地のどちらを取るか、日当たりと広さのどちらを優先するかといったトレードオフの関係を理解し、あらかじめ優先順位を決めておくことで、出会える物件の数も増え、土地が見つかった際の意思決定も格段に早くなります。
土地探しの優先順位を決める前の情報整理

土地の優先順位を決めるには、まず家族の状況や将来の計画を具体化しなければなりません。現在の暮らしだけでなく、5年後、10年後の生活を見据えた判断基準を明確にしていきましょう。
家族構成と将来計画の把握
現在の家族構成はもちろん、将来的な変化も含めて考える必要があります。例えば、現在は夫婦二人でも、子どもを予定している場合は必要な部屋数が増えますし、反対に子どもが独立した後のことを考えると、あまりに大きな家では維持が大変になるかもしれません。
また、両親との同居や二世帯住宅を検討している場合は、その分の面積や駐車スペースが必要です。高齢期を迎えた際のバリアフリー対応や、医療機関へのアクセスも考慮しておくと、長く快適に暮らせる土地選びができます。
必要な建物規模と間取りの想定
家族構成に合わせて、必要な部屋数や広さの目安を決めていきましょう。リビング・ダイニング・キッチンの配置や、個室の数、収納スペースなど、具体的な間取りをイメージすることで、土地に求める条件も見えてきます。
平屋を希望する場合は広めの敷地が必要になりますし、二階建てなら比較的コンパクトな敷地でも対応可能。将来的に増築や間取り変更の可能性がある場合は、ある程度余裕のある土地を選んでおくと安心です。
土地・建物・諸費用の予算配分
家づくりの総予算から逆算して、土地にかけられる予算を明確にします。一般的には、土地と建物の費用が全体の8割程度、残り2割が外構工事や諸費用となることが多いです。
ただし、建物にこだわりたい場合は土地の予算を少し抑える、逆に立地を重視したい場合は建物を標準的な仕様にするといった調整も必要です。融資の借入額や返済計画とも連動するため、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら、現実的な予算配分を決めていきましょう。
関連記事:総予算で考える資金計画~土地探しからスタートの方へ~
希望エリアと生活圏
漠然と「福井市内で」「丹南辺りで」と考えるのではなく、具体的な市区町村やエリアまで絞り込んでおくことが大切です。特に、これから小学校や中学校に上がる子どもがいる家庭では、希望する学校の校区内かどうかが重要な判断基準になります。
また、祖父母の協力が必要であれば、実家との距離も考える必要がありますし、現在住んでいる地域とのつながりも考慮しておきたいポイント。転勤の可能性がある場合は交通の便が良いエリアを選んでおくと、将来の選択肢が広がります。
通勤・通学・買い物など生活動線
平日の通勤・通学ルートと時間は、毎日の生活に直結する重要な要素です。特に福井のような車社会では、朝夕の渋滞を避けられるルートかどうか、冬場の積雪時でも安全に通行できるかといった点も確認が必要。
買い物や病院、銀行や郵便局といった生活に必要な施設へのアクセスも忘れずにチェックしましょう。休日の過ごし方に合わせて、公園やレジャー施設への行きやすさも考慮すると、より満足度の高い土地選びができるはずです。
土地条件を分解して理解する

土地の条件は複雑に絡み合っているため、一つひとつを分解して整理することで、どの部分を優先すべきかが見えてきます。感覚的な判断だけでなく、具体的な数値や条件として把握していきましょう。
立地とアクセス
最寄り駅やバス停までの距離は、公共交通を利用する頻度によって重要度が変わります。車中心の生活であれば多少駅から遠くても問題ありませんが、将来的に車の運転が難しくなることも考慮しておかなくてはなりません。
幹線道路へのアクセスの良さは、通勤や買い物の利便性に直結します。ただし、交通量の多い道路に近すぎると騒音や排気ガスの問題も。実際に平日・休日の異なる時間帯に現地を訪れて、交通量や騒音レベルを確認することをおすすめします。
面積・形状・高低差
土地の面積は建物の規模や庭、駐車スペースの確保に直接影響します。ただし、単純に広ければ良いというわけでもなく、形状や高低差によって有効活用できる面積が変わることも。
変形地や高低差のある土地は価格が安くなることが多いものの、建物の設計に制約が生まれたり、造成工事が必要になったりする場合もあります。これらの条件が建築費にどの程度影響するかを事前に確認し、トータルコストで判断しましょう。
法規制・建築条件
建ぺい率や容積率は、建物の大きさを決める重要な要素。希望する間取りや規模の建物が建築可能かどうかを、事前に建築会社に相談しておくと安心です。
用途地域によっては、建物の高さや用途に制限があったり、将来的に周辺環境が変化したりする可能性も。建築条件付き土地の場合は、指定された建築会社での建築が条件となるため、建物のプランや価格も合わせて検討する必要があります。
周辺環境・将来性
現在の周辺環境だけでなく、将来的な変化も含めて判断したいポイントです。近くに広い空き地がある場合、将来的にどのような建物が建つ可能性があるかを市役所の都市計画課などで確認することができます。
商業施設や公共施設の建設予定がある場合は利便性が向上する一方、交通量の増加や騒音の心配も。防犯面では、街灯の設置状況や人通りの多さ、近隣住民の年齢層なども参考になります。
日当たり・通風・眺望
南向きの土地が必ずしも良いとは限りません。周囲の建物の状況や土地の形状によって、実際の日照時間は大きく変わります。朝・昼・夕方の異なる時間帯に現地を訪れ、実際の日当たりを確認することが重要です。
風の抜け方も快適性に影響する要素。周囲の建物や地形によって風の流れが変わるため、夏の暑い時期や冬の寒い時期の風向きも考慮したいところ。眺望については、現在見えている景色が将来も保たれるかどうかという視点も忘れずに。
暮らし方から考える土地条件

同じ条件の土地でも、家族の暮らし方によって優先すべきポイントが大きく変わります。自分たちのライフスタイルを客観的に見つめ直し、それに合った土地条件を整理してみましょう。
車中心か公共交通中心か
福井では車での移動が中心となる場合が多いため、駐車スペースの確保が重要な条件になります。来客用の駐車場や、将来的に車の台数が増える可能性も考慮して、ゆとりのあるスペースを確保したいところ。
一方、公共交通を積極的に利用したい場合は、駅やバス停までの距離、運行本数、終電時刻などが重要な判断基準に。車の維持費を抑えたい場合は、多少土地が高くても公共交通の利便性を優先する選択肢もあります。
趣味や休日の過ごし方
アウトドア派の場合は、山や海へのアクセスの良さ、キャンプ用品などの大型荷物を置ける収納スペースの確保が重要。ガーデニングが趣味なら日当たりの良い庭、DIYが好きなら作業音を気にしなくて良い立地が条件になります。
インドア派で読書や映画鑑賞を楽しみたい場合は、静かな環境や図書館・映画館へのアクセスを重視することも。楽器演奏が趣味の場合は、防音対策や近隣への騒音の配慮も考慮した土地選びが必要です。
在宅ワーク・静かな環境
コロナ禍以降、在宅ワークの普及により、家で集中して仕事ができる環境を求める方が増えています。通信環境の良さはもちろん、交通騒音や工事音などが少ない静かな立地が重要な条件に。
ただし、大きなデータのやり取りやオンライン会議などで良質なwifi環境が求められる場合は、インターネットの接続状況も加味して立地を選ぶ必要があります。
子育て・高齢期の条件
小さなお子さんがいる家庭では、保育園や小学校への送迎のしやすさ、公園や医療機関の近さが重要な判断基準。通学路の安全性や、周辺に同世代の子どもがいるかといった環境も確認しておきたいポイント。
将来的に高齢期を迎えることを考えると、段差の少ないバリアフリー対応がしやすい平坦な土地、病院や薬局への通いやすさ、公共交通機関の利用しやすさなども視野に入れておくと安心です。介護が必要になった際のサービス提供エリアかどうかも、事前に確認しておくと良いでしょう。
優先順位を決めるための5つのステップ

ここまで整理した情報をもとに、実際に土地条件の優先順位を決めるための5つのステップを進めていきましょう。家族全員が納得できる判断基準を作ることで、迷いの少ない土地選びが可能になります。
STEP1. 条件の洗い出し
まずは制限をかけずに、理想の土地に求める条件をすべて書き出してみましょう。
「駅から徒歩10分以内」「幹線道路に出やすい」「南向き」「70坪以上」「新興住宅地で公園の近く」「予算1,500万円以内」など、思いつく条件をリストアップ。この段階では現実性は考えず、理想を素直に表現することが大切です。
STEP2. 必須条件と希望条件の仕分け
洗い出した条件を「絶対に譲れない必須条件」と「あれば嬉しい希望条件」に分類します。一般的には、予算や学区などが必須条件に、眺望や静かさなどは希望条件になる場合が多いですが、あくまでも「わが家の場合」を考えて振り分けていきましょう。この分類により、妥協可能な部分を明確にすることができます。
STEP3. 条件ごとの重要度ランク付け
必須条件と希望条件それぞれに対して、A(最重要)、B(重要)、C(あれば良い)といったランク付けを行います。5段階、10段階など数字で点数化していっても構いません。客観的な基準を作ることで、家族間の価値観の違いも見えてきます。
STEP4. 家族全員での最終調整
ランク付けした内容を家族で共有し、意見の違いがある部分を話し合いで調整。夫は通勤アクセスを重視し、妻は子育て環境を重視するといった違いがある場合も、優先順位を明確にすることで建設的な議論ができるはずです。
STEP5. チェックリスト化と見える化
最終的に決まった優先順位を、土地見学時に使えるチェックリスト形式にまとめます。A4用紙1枚程度で、現地で確認すべき項目と評価基準を整理。複数の候補地を比較検討する際にも、このリストがあれば効率的な判断ができます。
福井での土地探し特有の優先条件

福井での暮らしには、雪国特有の条件や地域性を踏まえた土地選びの視点が重要です。一般的な条件に加えて、地域特性を考慮した優先順位を設定することで、より満足度の高い土地選びができるはずです。
雪対策と除雪体制
福井では冬期の積雪への対応が欠かせません。道路の除雪体制が整っているかどうかは、冬場の通勤・通学に大きく影響します。市道や県道は比較的除雪が早いものの、私道や行き止まりの道路は除雪が遅れることも。
敷地内の雪処理スペースの確保も重要なポイント。駐車場の雪をどこに移すか、屋根からの落雪スペースは十分かといった点を、実際に雪の降る季節に現地確認することをおすすめします。
最近では雪下ろしが不要な屋根形状の住宅も増えているため、建物設計と合わせて総合的に検討を。
共働き家庭と通勤アクセス
福井は共働き率が全国トップクラスのため、夫婦それぞれの通勤アクセスを考慮して土地選びをする必要があります。朝夕の渋滞ポイントや、冬場の路面凍結による通勤時間の延長も想定しておきたいところ。
JRやえちぜん鉄道などの公共交通機関が利用できる場合は、時間帯や悪天候時の運行状況なども確認しておくと安心です。パーク&ライドが可能な駅周辺の土地なら、車と電車を使い分けるライフスタイルも選択できます。
祖父母との距離と子育て支援
三世代同居や近居が多い福井では、祖父母に頼れる距離感も土地選びの重要な条件になります。保育園の送迎をお願いしたり、急な残業時に子どもを預けたりできる距離にあると、共働き家庭には心強いサポート体制に。
ただし、あまりに近すぎるとプライバシーの確保が難しくなることも。車で10分程度の距離感なら、必要な時にはすぐに駆けつけられる一方、プライバシーを気にすることなく普段の生活を送ることができます。
災害リスクと地盤条件
福井は比較的災害の少ない地域とされていますが、近年の気候変動により豪雨災害のリスクも高まっています。市町村が発行するハザードマップで、洪水・土砂災害・地震のリスクを事前に確認することが重要です。
地盤の強さも長期的な住まいの安全性に関わる要素。福井市は全体的に地盤が緩めですが、土地選びによって地盤改良にかかる費用は変わってきます。
優先順位設定で注意すべき落とし穴

土地選びの優先順位を決める際に陥りがちな失敗パターンを知っておくことで、より適切な判断ができるようになります。感情的な判断や思い込みによるミスマッチを避けるためのポイントを押さえておきましょう。
「今」だけで判断しない
多くの方が陥りがちなのが、現在の生活スタイルだけを基準にした条件設定。子どもが小さいうちは学校の近さを重視しても、成長とともに重要度が変わることもあります。今は活気のある新興住宅地も、20年、30年と経つうちに状況は変わってくるでしょう。
必須条件を増やしすぎない
「絶対にこれだけは譲れない」という条件を増やしすぎると、候補となる土地がほとんどなくなってしまいます。本当に必要な必須条件は3つ程度に絞り込み、その他は希望条件として柔軟に考えることが大切。
人の意見や直感に左右されない
ネット情報や友人の意見に過度に影響されず、自分たちの価値観を軸にした判断を心がけましょう。
初回の見学で直感的に気に入った場合でも、それだけで決めるのは危険です。優先順位に基づいた客観的な評価と、実際に暮らした際の利便性を冷静に検討してから最終判断を下すことが、後悔しない土地選びにつながります。
まとめ

土地探しは、「条件をすべて満たす土地は存在しない」という現実を受け入れることから始まります。限られた予算と選択肢の中で、家族にとって最も価値のある土地を見つけるためには、明確な優先順位が不可欠。家族構成や将来計画、ライフスタイルに合わせて条件を整理し、必須条件と希望条件を分類することで、迷いの少ない土地選びが可能になります。
雪対策や通勤アクセス、災害リスクなど、福井という地域特性を考えながら、ご家族にとってベターな選択肢を考えてみてください。
土地は一度購入すると簡単には変更できない、人生で最も大きな買い物の一つ。だからこそ、感情的な判断だけでなく、論理的な優先順位に基づいた選択が、長く愛着を持って住み続けられる土地との出会いにつながるはずです。
関連記事:土地探し入門
Recommended articles