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2025.05.23

住まいづくりコラム

日本の美学『侘び寂び』と住まい

こんにちは、永森建設です。

住まいに“明るさ”は欠かせない要素です。
一日の始まりを、朝食を摂りながら迎える明るいダイニングキッチン。
休日、家族で過ごす陽だまりのような暖かいリビング。

しかし、居室という居室すべてが明るければよいというわけでもありません。あえて明るさを抑えた空間が、使い手の感性を育むこともあるのではないでしょうか。

日本には古くから“侘び寂び”という独特の美学、美意識があります。
“侘び”は飾り気のない質素な美しさ、“寂び”は時の経過による枯淡な趣を意味するもので、完璧さや華やかさよりも、控えめで深みのある美しさを尊ぶ美意識が、この“侘び寂び”という言葉に込められています。
日常の住まいにおいても、この感性を取り入れることで、より心落ち着く空間が生まれることもあります。

たとえば、こちらはご主人が趣味の盆栽を眺めるためのお部屋

ここでは、あえて明るさを抑えた空間設計が施されています。
緑の濃淡や幹の曲線など盆栽の持つ繊細な造形美は、適度な陰影のある空間だからこそ、より際立ちます。

また、読書や書き物、パソコンを使うような書斎やワークスペースも、光を抑えた設計が思考を整理し、創造性を高める助けとなります。
実際、過度に明るい環境は視覚的な刺激が強すぎるため、集中力の低下につながるという研究結果もあるようです。

こちらは、小屋裏空間を活用したワークスペースの事例です。

天井の低さが生み出す落ち着いた空気感と明るすぎない楚々とした雰囲気が、集中力を高める環境をつくり出しています。
窓の外の格子を介して差し込む光には、どこか木漏れ日のような心地よさがありますね。

住まいにおいては、明るいことが必ずしも正解ではありません。
大切なのは、空間の用途やそこで過ごす時間の質を考え、時に明るさを、時に陰影を意識した空間設計を行うことです。
日本の美意識を取り入れた仄明るい空間は、日々の暮らしに、これまでとは違う豊かさをもたらしてくれるのではないでしょうか。

関連記事:暮らしに合わせて考える、窓の形とレイアウト

2025.05.23

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